うつせみ、衣を残して逃げ去った決して美人ではないが、慎み深い女性。その抜け殻のような衣を持ち帰り、想いを歌にたくすという、何ともキザな男、光源氏。
源氏物語の現代語訳は、読んでいて面白いというものとは思えないのだが、千年ほども前に書かれた長編の物語で、日本文学上の最高傑作とも言われている。何が最高なのかは、未だにわからない。恋文に使えそうな和歌も一杯。節操のなさは天下一品の光源氏。こんな時代に子供が出来ても、誰が父親かわからないような混乱ぶり。あなたの子供と指名されれば、その時は逃げないというのが男の矜持、そんな時代であろうか。
今年見つけた庭の空蝉。ぬけがらという言葉はあまりに芸がない。よく見ると、背中の出口以外は今にも動き出しそうに、生きていた姿そのままに目があり手足があり、それでいて死骸ではなく、抜け殻であることが信じられないくらいに命を感じる。
抜け出した命の鳴き声を聞きながら、スイカにトウモロコシ、今年の夏は暑い。
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