2017年12月20日水曜日

一汁一菜でよいという提案

 こんな本を見つけた直後に、土井善晴の美食探訪という番組を見てしまった。神戸牛シャトーブリアンのステーキ、前菜等にはキャビア、トリュフ、フォアグラ・・・圧巻のシャトーブリアンに至るまでに、ため息の出るような品々が並ぶ。コースで3万円以上。そして築地市場の料亭に場面は移り、豪華な刺身の盛り合わせの後極上のアンコウ鍋に至る。 このアンコウ鍋、出汁に焼鯛を一匹丸ごと・・・

  さてと、瀕死の状態の東京芝浦電気、この東芝の社長で経団連の会長も務めた 『めざしの土光さん』 と言われた土光敏夫という人がいた。今となっては高値のイワシだが、当時はまだまだ安物で、EPAとかDHAなど知られてはいない頃、老夫婦がめざしで質素な食事をする姿が美談として世情に伝えられた。高級料亭などを歴訪し、さまざまな贅沢を尽くした後に行きついたのがめざしであったのかどうかは知らないが、全く贅沢を知らずに経団連の会長まで行ったとは思えない。その映像を見た後に、貧乏な我が家で土光さんもそうなのだからと、嫌いなめざしを無理やり食べさせられたことには閉口した。

 ついで、と言ってはなんですが、お釈迦さんは元々が釈迦族の王子で、酒池肉林かどうかは知らないが、人生と人々の苦しみに気付くまで、たいそうな贅沢をしていたのは間違いない。その贅沢の極限まで行って飽きてしまったかどうかは別として、多感な青年であったことは間違いないだろう。初めから貧乏であっては、決して仏教の悟りには行きつけなかったのではないかと思うのは下衆の勘繰りというものらしい。

 あの美食探訪という番組を見なければそんなことは思わなかったのだが、この本の題名にはもしかしたら、『あなたたちは』 とついているのではと再び下衆の勘繰りを入れてしまう。

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