この本を買ったのは多分2回目。最初はまだ昭和の時代で、その発想に驚きを覚え、その後に訪れた何度目かの法隆寺を見る目が変わったのを覚えている。
今回は、関裕二氏の『藤原氏の正体』を読み返して、また『隠された十字架』を読みたいと思ったからだが、文庫で約600頁、資料の多さからもタフな本で、久々に体力を消耗しそうである。著者の梅原猛氏は昨年亡くなった。先日放送されたNHKのぶらタモリでは、この著書の事は一顧だにされてはいない。事は藤原氏のイメージだけでなく、天智天皇や、聖徳太子、天武・持統天皇、光明皇后などの華麗なイメージの人々の暗部に光を当てることになる。
関裕二氏の著書も、藤原氏の先祖、藤原の祖と言える中臣鎌足が、韓人、百済の王子、豊璋であるという論理を展開していて、藤原氏のその後の悪行を並べ立てる。これは藤原氏にとっては見逃せない。藤原氏と言ってしまえば遠い過去の人かと思えば、一条、二条、鷹司、近衛、さらに下り藤を元の家紋とする一族は、日本の隅々に行き渡って存在している。佐藤、安藤、加藤、斎藤、並べればキリがない。これらを敵に回す理論がたとえ正しいとしても、本筋となることはこの体制が覆ったとしても初期の記録上の隠滅がうまく作用していて難しい。
法隆寺は、一度火災で焼失した記録は残っているが、再建された記録はどこにもない。この本は、法隆寺に纏わりつく謎と不思議さを、推理と実際の記録と照らし合わせて、ジグソーパズルのように論理を組み立てていく。 浮かび上がるものは、今までの法隆寺のイメージを根底から覆すものになっている。推理小説としてこの本を読むというのも一興ではあるが。
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